【インタビュー】 「三浦林商」の代表兼「NPO法人もりずむ」の副理事長、三浦妃己郎さん

【インタビュー】 「三浦林商」の代表兼「NPO法人もりずむ」の副理事長、三浦妃己郎さん

取材 : 鄭美羅(チョンミラ)

「三浦林商」の代表兼「NPO法人もりずむ」の副理事長、三浦妃己郎さん

<「林業の6次産業化」に取り組む林業界の異端児>

三重県で昭和35年に創業した「三浦林商」の代表兼「NPO法人もりずむ」の副理事長を務めている三浦妃己郎(みうら・きみお)さん。普段木こりの仕事をする時の服装で東京の銀座に現れた彼の胸元には、「みうらA」と書かれたガムテープの名札が貼られていた。山の仕事でもしも何かあった時、身元と血液型を確認するためのものだそうだ。木こりさんとは言え、林業に留まらず木と森に関わる様々な活動を通じて林業の領域を広げている三浦さんの話を聞いてみた。
三浦林商は三浦さんのお爺さんが創業した、57年の歴史を持つ会社である。子供の頃から山の仕事を手伝っていた彼は、大学卒業後約5年間他の会社で事務の仕事をしていたが、長男として家業を継ぐために28歳の時実家に戻ってきた。林業の好況期から不況期まで見てきた彼は、36歳で3代目の代表となり、今の三浦林商を支えている。主に委託を受けた山から木を伐採して、伐った木を販売する会社であるが、三浦さんに経営者の世代交代が行われてからは、自ら切り拓いてきた様々な事業にも積極的に取り組んでいる。

三浦林商の特徴 その1.オーダーメイド・ニーズに答える!

三浦林商の名刺には、事業内容として伐採、間伐、育林、製材、建築、リフォーム、家具、森林教室など「木のことは何でもお尋ねください」という文句が書いてある。その言葉通り、三浦さんは自ら体得してきた豊かな経験と知識をベースに林業や木材業に限らず、デザイン・加工・販売及び研究・開発まで幅広く木の仕事に携わっている。
林業の拡張に挑戦し続けている三浦林商の特徴は、大きく三つに分けられる。
その一つ目は、ほぼ全てのオーダーメイド・ニーズに答えること!普段ホームセンターで売る木材は工業化された規格に当てはまるものしかない。しかし、マーケットには売っていないが、非規格の木材を必要とするニーズも世の中には存在する。例えば、特殊な長さと幅の木材を必要とする設計士や建築業者などだ。その特殊なニーズに答えられるのが、他と違う三浦林商の大きな特徴の一つとしてあげられる。それは、三浦林商の仕事が、山から木を直接建築業者に渡せる木こりさんであり、丸太の自由自在な加工が可能だからできることである。

三浦林商の特徴 その2.月齢伐採と葉枯らし天然乾燥

二つ目は、月齢伐採と葉枯らし天然乾燥を創業した昭和35年から続けていることである。両方とも日本の昔ながらのやり方で、三浦林商は今も一番自然に近い方法でそのやり方を守っている。月齢伐採とは、新月から満月に向かう半月は木を伐らず、満月から新月に向かう半月の間だけ伐採をする方法である。そして、葉枯らし天然乾燥は、山で伐採した木を皮むきして枝葉を付けたまま山に置いておくことで、生材丸太に含まれている水分を葉から蒸散させる乾燥方法のこと。葉枯らし天然乾燥は、木の重量を減らし、伐り立ての100kgの木を30~40kg程度に軽くすることで、集材作業や運搬コストを軽減できる。
葉っぱが生きようとして水分を吸い上げる作業を繰り返し、幹に水分がなくなるまでは短いと3ヶ月、長いと1年はかかる。100℃で木を強制乾燥させる工業乾燥の場合、72時間で乾燥が終わるが、木の水分が抜ける時、木の癒し成分も抜けてしまうようだ。一方、天然乾燥した木の場合、「樹の細胞はずっと生きているもので、伐った木は死んでも呼吸する。それで、生きている木のような効果をそのまま持つようになる」と三浦さんは説明した。「形だけ残っている木を使っては良い仕事ができないから」と、工業乾燥に比べて時間も手間もかかる葉枯らし天然乾燥に今の時代になっても拘っている理由を語る三浦さん。

三浦林商の特徴 その3.林業の6次産業化

三つ目は、「三浦イズム」とも言える「林業の6次産業化」である。三浦さんが提唱する「林業の6次産業化」は、林業を取り囲む1次+2次+3次産業を合わせた総合産業のこと。つまり、林業において、1次産業は木を伐って売ることを、2次産業は工業として加工した木材を売ることを、3次産業は木の商品とサービスを売ることを意味する。その三つの産業を合わせたものが「林業の6次産業化」である。
三浦さんは「人と同じことをするだけではいけない」という思いで、新しいニーズを発見し、他の人が売っていないものを売りはじめた。オーダーメイドの木材はもちろん、余った木を利用した丸太の椅子やピアスなどまで、今は約20種類の木の商品とサービスを開発・販売している。
他にも、年3~4回小学校や中学校に行って、山の仕事の知恵を伝える出前授業も行っている。例えば、のこぎりで丸太を切ったり、木材で工夫して色んなもの作りをしたり、伐った木を山から降ろす際に滑車を使うことで、人間の力だけではできないことを学んだりするなど、木と仲良くなる、森が楽しくなることを子供たちに教えている。また、山に来てもらって、はしご登りや木の高さを味わってもらうことなど森の体験も提供している。
暮らしと森を繋ぐ「NPO法人もりずむ」とは森の体験や木の工作及び商品の研究・開発を共にしている。また、東京の秋葉原にオープンした木材専門店Mocoriでは、様々な希少材をはじめ、木材や木工品の販売もしている。

全体を知ることで、ゴミが資源に変わる!

林業の領域を拡張させている三浦さんだが、なぜこのように活動を広げることになったのだろうか。そこには、「山から木を生産しても、最終的にどんな形で使われるか知らないといけない」という三浦さんの思いが込められている。
「木に傷がついた時、山の仕事だけをすると、その意味を分からないまま捨てることになります。しかし、全体を知っていると、傷がついた時は、その理由を知って、どこに使えるか工夫ができるのです。木の皮だって、捨てずに京都のお寺や料亭などの建物の屋根、壁または装飾材としても使えるのです。曲がった木も使い道が出てきます。家を建てる時も、大工さんが木に対してどんな思いで家を建てるかを知ると、山からいただいた木をより有効に活用できます。それで、大工さんの所にもお手伝いに行ったりします。」
まさに、知らないとただのゴミに過ぎないものが、知っていると資源に変わる瞬間だと感じた。そのために、木こりの仕事だけに留まらず、林業に関わる全体のことを勉強して、研究と工夫を重ねてきた三浦さん。それが人が彼を林業界の異端児と呼ぶ「三浦イズム」を作ったのだろう。
三浦さんは、最後に「木から健康をいただこう!」と、木の効果を世の中に広めたいと、これからの希望を語った。特に、杉とヒノキは人間に対して好影響与える木であるようだ。「木をもっと知った上で使うと、より人間の心身の状態がよくなります!それを広めていきたいです!」と語る三浦さんは、林業の全領域を見渡す「うちのやり方」で、今日も「林業の6次産業化」に取り組んでいる。