【セミナーレポート2018】木暮人連続セミナー第6回:「先人の知恵を継承する会津桐材生産者 齋藤さんと 福島県職員山田さんのここでしか聞けない話」

木暮人連続セミナー2018 6回連続
森と木が育む健やかな暮らし

日時:2018年10月13日(土)13時30分開場、14時~17時
場所:木暮人倶楽部セミナールーム(東京都中央区銀座7-4-12銀座メディカルビル9階)
登壇者: 齋藤洋一さん (齋藤桐材店) 山田誠さん (福島県林業振興課)

 

【はじめに 経年美化】
現代の暮らしに、必要とされるもののほとんどは、石油由来の工業生産品です。

それらは、出来上がった瞬間がピークで、時が経つとともに少しずつ価値はなくなる、つまり「経年劣化」をします。

新品志向。常に新しいものが良い。様々な機能があることが良いものである。
そういった価値観・仕組みのなかで、私たちは「消費者」という立場を強制されているのではないでしょうか。

一方で、丁寧に造られた天然の素材を、目利き・職人の手仕事によってつくられたモノは、使い手に渡った瞬間がピークではなく、使い続ける事で愛着と味わいで、美しくなっていく。

「新品が良い。消費は美徳」という価値観から、モノを大切にし、愛おしみ、最後まで使い切る、「愛好者」という発想は、これからの暮らしを豊かにすることにはならないでしょうか。

「消費者ではなく愛好者として暮らしを豊かにする事」これは、本セミナーにて、山本厚生さんがお伝え頂いた言葉です。

【齋藤洋一さん桐材屋になるまで・・】

齋藤さんは、齋藤桐材店を受け継ぐと決め、お父さまから「自分の好きなようにやれ」という言葉をもらい、まずはじめにしたのは、全国の桐に縁のある職人さんたちをハイエースで、訊ねまわることだったそうです。

新潟県加茂市で出会った箪笥職人の高橋さんの桐材の美しさは、当時の齋藤さんにとっては、衝撃的だったようです。

高橋さんのような桐材を作りたい。

その一心から教えを乞い、20数年の試行錯誤と失敗の経験を積み重ね、独自の方法で、唯一無二の桐材をつくることに至りました。

その材としての美しさの背後にある「経年美化」は、一般的にいわれる「経年美化」以上の時を重ねていました。

齋藤さんの桐材は、苗を育て、途方もない山の草刈りをつづけ、自然に立ち枯れるまで、数十年。

その立ち枯れの桐の木を山から下ろし、製材し、灰汁抜き・乾燥を繰り返し、職人・お客さまの手に渡る迄、ほぼ、10年の時を経ます。

そうやって私たちの手に届く桐材の美しさは唯一無二、反りも曲りもなく、使い手に渡って、何十年も経過してもその美しさが衰えることはありません。

「人の心を奪うような、美しい桐材つくりを目指した齋藤さん」X「運は降ってくる?」

齋藤さんは、「自分が運が良い。」と言われますが、自身で運を引き寄せている。と感じます。

現在齋藤さんが管理している山には、1,300本の桐の木がありますが、それ以外にも、多様な樹木。

そして山菜やきのこなど豊かな恵みの山となっています。一般的なイメージを超える齋藤さんの山との暮らし・生業(なりわい)は、さまざまな気づきがあります。

南斜面の日当たりが良く、肥沃で、ゼオライトが豊富。水はけの良い山は、桐の生育には最適な山だそうです。

そしてその山は、齋藤さんが山主さんの想いを引き継いだものでした。
かつて、山主さんが山を手放そうと考えた時、多くの人がその山に魅力を感じていたそうですが、ゴルフ場などの開発目的がほとんどで、その山の樹木を生かそうと考えた人は齋藤さんお一人だけだったそうです。

材を買付ける先代のやり方から、苗から育てる桐材づくり。という齋藤さん独自の手法は、山を手に入れる事から始まったのです。

【それぞれに個性がある】

齋藤さんは、とても観察眼のある方です。
自分のつくる材料を置く棚は、風が吹くと簡単に潰れてしまうのに、大工の棟梁、箪笥職人の高橋さんのつくる棚はどんな大風にも倒れないことから、風がどこから吹いてくるのか、そして雨や雪の降り方をじっくり観察する事の大切さを知りました。

それは、桐の山を見る事にも繋がり、そして桐の木一本一本にも、個性がある事を知りました。
もって生まれたDNAに加え、土壌や日当たり水はけなどが桐の個性を育てます。

木一本一本に話しかけながら、面倒をみることで、それぞれに個性がある事を知り、子供のような存在になっていきました。

齋藤さんはある時、寿命を全うし自然に立ち枯れ倒れた桐の木を、山から降ろして、製材機にいれると、
これまで経験したことのない感触、そして仕上がりを知ることになります。
自然に立ち枯れた桐は、水分や養分を使いつくし、重量も灰汁の原因となるよう成分も無くなっていたのでしょうか?
それ以来、齋藤さんは伐採という方法ではなく、自然に立ち枯れ倒れた桐だけを、製材することしたのです。

そして現在、齋藤さんは一般的な規格の寸法の材料を、機械的に製材するのではなく、一本一本の個性のある桐の木をどうやって活かすかを考えるようになったそうです。

桐材は、土壌によって色も、白・赤・黄と色が変わります。
桐たんすのイメージなどから一般的に桐は柾目。と思われがちですが、
様々な文様をもつ板目こそ、実のところ、会津桐の魅力を分かりやすく伝えてくれるとのこと。

木目を雲のような・・・あるいは、波のような。と愛で楽しんだり、あるいは虫食いの跡を、花鳥風月・自然の景色を映してみたり。

そんな先人たちの、自然のすべてを受け入れ、愛でていたそのおおらかな心で、材と向き合っています。

【草・虫・動物たちとの闘い。そして果てしない自然のあく抜きの作業】

草や虫を愛でる気持ちは大切ではありますが、桐材はとてもデリケートで、周りに生える雑草は、桐の生育に影響をあたえ、桐が大好きな様々な虫や小動物も、良質な桐材をつくるうえでは、出来る限り近づいてほしくない存在であるため、齋藤さんは、年6回の草刈りをされます。

そして製材後のあく抜き作業では、天候や風向きなどを観ながら、木材の位置を動かす作業を繰り返すのですが、この作業は、齋藤さんしか出来ない作業だそうです。

板に残る灰汁の状況から、木材を置く位置や、雨の当たる傾きを細かく調整します。齋藤さんの頭にはそれがすべて入っているのです。

【齋藤さんの桐材の価格】

苗づくりからの桐材づくり。手間暇かけた、灰汁抜き・乾燥作業。
さぞかし、高価な材料で、一般人には手が届かないだろう。
と思われることでしょう。

齋藤さんの桐材の価格は、中国産のホームセンターなどに流通する材の価格の約4倍程度です。
現代の木材事情。安価な中国産の材料。などと比較すれば、遥かに高価な材料でしょう。

安価なものには、安価の価値が。
高価なものには、高価な価値があります。

求められる品質、そしてその価値を知る人にとっては、決して高すぎるものではない。
それが齋藤さんの素材の価値を知る人の声です。

そして、齋藤さんは桐材以外の山の恵みを山の管理費に充てるなど、林業家としてその枠を超える様々な試みをしながら、桐を育てています。
その意味では、すべての手間を桐の価格自体に転嫁はしていないようです。

私たちはその意味で、その価値をどう捉えるか。
そこは、みなさんの判断にお任せしましょう。

【試行錯誤・人との縁】

齋藤さんの活動を応援する人の輪は、広がっています。

首都圏にも齋藤さんのファンは沢山いらっしゃいますが、その中、地域でこれらの活動をサポートしているのは、福島県林業振興課の山田 誠さんです。

かつて桐材といえば、会津あるいは岩手の南部桐。といわれていましたが、現在国内生産量は、わずか4%。

輸入材の87%が中国産です。そのなか、福島県は桐の生産量が全国一位で桐材生産を牽引してきました。

1年であっという間に4m近く成長する桐ですが、実は生育させるのは、大変難しく手間暇がかかります。

その中で山田さんは、「会津桐ブランドの復活」という県の目標を掲げ、福島県の南部西部の会津地方を中心に会津桐の生産者と資源を増やす活動を始めました。

春に咲く桐の花は、薄紫。伝統的に神聖な木として、皇室をはじめ、足利市や織田氏、豊臣氏など時の権力者の紋章として、そして現在は政府の文様として使用されています。

桐材は、「木に同じ」と書くように、本来「草科」の植物ともいわれます。
多孔質で、湿気を通さず、割れや狂いが少ない、発火しにくい。燃えにくい。
という特徴を有し、火災や虫食いなどから大切なものを守ってくれる、桐箪笥、桐箱や箏等の高級木材として、重宝されていました。

生活環境の変化から、箪笥などの需要が減少する中、齋藤さんの桐材は、これまでの桐材の用途を超える、様々な用途の提案が広がっています。

桐材を使ったヘッドフォン。
会津のもう一つの伝統工芸の漆とコラボレーションした日本酒の桐漆酒箱。

などはあらたか試みです。

そして、まだまだ残っている伝統工芸の茶道具や家具などの材としても齋藤さんの材は大きな信頼を得ています。

これまで齋藤さんは、独立独歩で苗木の育成から山の管理、草刈、製材、あく抜き、乾燥作業。をこなしてきました。

その山の恵みを今の世代一代で、採りつくすのではなく、未来の子供たちの世代の為に、桐の苗を植える活動が必要とされています。

未来に繋ぐためには、多くの人の理解と協力が必要となります。

山田さんは、齋藤さんの最大の理解者、サポーターである一方、会津桐をかかえる福島県の事業の担当者として、齋藤さんと同じ目標に向けた新たな挑戦も始まります。

会津の国道49号線が春の頃、薄紫の桐の花が咲き乱れる街道になり、多くの人を楽しませてくれるのは、そう遠くはないのではないでしょうか。

 

 

(木暮人倶楽部)

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